静かに建物の中に入る。
たまに警備員みたいな人を見かけた。
………私達は一言も言葉を発しなかった。
そして、ある部屋の前に来ると。
あの人が私に声をかける。
「犯人にはこの中で待ってもらっているけど……一人で大丈夫?」
「……………。」
大丈夫…………ではない。
正直怖い。
すごく怖い。
どうしよう…。
どうしよう………。
体がふるえ始める。
嫌だ。と
行きたくない。と
体が言っているようだった。
でも、
でも。
私は言った。
「………一人で大丈夫です。いかせてください。」
この先にどんな真実が待っていようとも。
この恐怖からも
現実からも
絶対、
絶対に。
「逃げたくないんです。」
そこで震えは止まった。
恐怖も
悲しみも。
すべて力にかえたから。
そう言うとその人は
静かに頷いて
ゆっくりと
頑丈そうな扉を
開けてくれた。