おなかの必死の捜索が始まりました。

まずは森の中に入りました。

木の実を食べて、生きながらえているに違いないと思ったのです。

うっそうとした森の中を、日が上がるとともに歩き回りました。

大声で、男を呼びます。

「あんたぁ、あんたぁ! 

あいが、わるかったよぉ! 

出てきておくれよぉ!」
と呼び続けます。

しかし答える声はなく、その木々の間に吸い込まれていきます。

二日三日と経ち、四日目からは村人総出の探索なりました。

「洞窟じゃないか?」
という声が上がり、おなかがすぐに駆け出しました。

たき火の跡がありました。

確かに居たようです。

しかし男の姿は、ありませんでした。

がっくりと肩を落として代えるおなかに、村人たちが声をかけていきます。

皆口々に、
「すまなんだ、かわいそうなことをした。」
と言います。

まるで男の死亡を告げるがごとくにです。

「死んどりゃせん! 生きとる、そうに決まっとる!」
と、村人たちの手を振り払いました。

どっぷりと日の暮れた道を歩くおなかの目に、煌々とと灯りの点いた我が家が目に入りました。

あれは、まごう事なき我が家です。

藁葺きの屋根と、庭の隅には痩せこけた柿の木があります。

「あんた、あんた、だよね……」
と脱兎のごとくに駆け込むおなかです。

そして土間で藁を打っている男を見つけて、へなへなと座り込んでしまいました。

「お帰り、おなか。」

 笑顔で迎えてくれた男に、
「あんた、ごめんよ。

ごめんよ、あんた。」
と、泣きじゃくるおなかでした。