この老婆、実は帰る家を失くしています。

あの大地震の折に、老婆だけでなく大半の家々が全半壊しています。

しかしめげることなく、村人総出で互いの家の修復を行いました。

そして老婆の家の修復に入ることになりました。

「お婆さん一人では暮らしが成り立つまい。

わしの所で面倒を見ようじゃないか。」

 村の世話役が、申し出ました。

で、それですんなりと話がまとまるかと思われたのですが。

「いやいや、世話役さん。

わしの所は、母ぁと後家娘の三人暮らしじゃ。

わしの所に来てもらいますわ。」と、辰三なる村人が声をあげたそうです。

さあそれから、

「わたしの所は年寄りが居ないから。」

「話し相手がおらんでは淋しかろうに。」

と、かまびすしいことに。