あ、そうだ。
「恭介さん」
「ん?」
「あの割烹料理屋さん、おいくらでした?」
お料理も美味しかったし、お店の雰囲気も上品だったし、きっといいお値段だったよね。
「それがな」
「はい」
「払ってない」
「えっ?」
思わず恭介さんの顔を凝視してしまった。
「いや払うつったんだど…女将がいらないと」
「どうしてですか?…まさか美作さん」
「いや、あの店は小雪の叔父さんの店らしい。だからいつも祇園祭の時は彼処にお呼ばれってのか、食べることになってるんだから彼女のお客だからいらないと」
「そんなわけには」
だってあれだけのお料理だよ、絶対いい値段するよ。
「あぁ、だから小雪にも言った」
「小雪さん何て?」
「気にしないでくれって。どうしても気になるなら出張で来た時にお座敷に呼んでくれってさ」
恭介さんが苦笑い
「『損して得取れどす』ってさ」
「フフフ…可愛らしいって言うか賢いですね」
「だな」
「恭介さん、関西出張の時は小雪さんのお座敷に行くことは許しますね」
「ん?」
「フフフ…高級クラブなんかに行かれるより安心ですから」
「クククク…ヤキモチ妬き」
私を抱き寄せて
「ぼちぼち寝ますか」
「はい」
私達も疲れていたのかベッドに横になった途端に熟睡した。



