それから数日後
「あら、森山君だったよね」
「えっ?」
声を掛けてくれたのは…高藤さん。
「あ、こんにちは」
「こんにちは。仕事は慣れた?」
「は、はい。今、先輩について営業に行って帰って来たとこです」
や、やばい。
めちゃめちゃ緊張してる。
「じゃあ初営業なんだ?」
「はい」
「ご苦労様。じゃあ初めての営業のお祝いにコーヒー奢るね」
「えっ?」
「と言っても缶コーヒーだけどね」
自販機で
「何れがいい?」
って聞いてくれて
「はい」
俺に缶コーヒーを渡してくれる。
「ありがとうございます」
優しいなぁ。
もしかして俺に気が…
「会社はどう?頑張れそう?うちはちょっと厳しいから…辞めていく人もいるのよね」
「あ、僕は大丈夫です。厳しいけど遣り甲斐はありますし、みんないい先輩ばかりだし」
「そう?それならいいんだけど」
「確かに社長は厳しい方ですね。先日も営業に怒鳴り込んで来ましたから」
あれには驚いた。
先輩がミスをしたようで社長直々に来たもんな。
だけどあのままだったら会社が大損するとこだったし当たり前と云えば当たり前か。
だけど怒るだけ怒ったら
「お前に任したんだからな」
って。
先輩も感激してたし見てた俺達も社長を改めて尊敬した。
「あれでもだいぶマシになったんだけど」
「えっ?」
あれでマシになったって前はどんなだったんだろう?



