「ママ」


「…うん?」


「ないてるの?」


「えっ?」


「志織?」


「ママ、おなかいたいの?」


涼が心配そうに。


「ううん、違うよ。あまりにも千景さんの歌が素敵だから」


「フッ そうか。涼、ママは大丈夫だ。どこも痛くないって」


「ふ~ん。へんなの」


涼にはまだ分からないわよね。


ステージが終わり



「戻るか?」


「はい」


席を立ってホテルへ


「あ、おばちゃん」


「涼君、今日はありがとうね」


「うん」


「今日はありがとうございました。素敵な曲ばかりで…」


「フフフ…ありがとう」


「『ラ·ビアン·ローズ』も」


「よかった」


「ママね、ないてたんだよ」


涼!


「おなかもいたくないのにね。おばちゃんのおうたがしゅてきだからなんだって…りょうにはわかんないけど」


涼…


「フフフ…志織さん、本当にありがとう。歌手冥利に尽きるわ」


「い、いえ、本当に素敵だったから」


千景さんがそっと私の肩を抱いて


「藤倉さん、本当にいい奥さんもらったわね。藤倉さんには勿体無いわ」


「……」


「フフフ…じゃあね。涼君 おやすみなさい」


「おやしゅみなさい」


千景さんと別れ部屋へ