「今晩は『七夕の夕べ』にようこそ。短い時間ですが、楽しんで下さい」
「は~い」
千景さんの挨拶に涼が手を上げて返事をしてる。
「フフフ… ありがとう」
千景さんが涼に手を振って
ピアノが鳴り始めた。
♪――
♪―
「She」
映画の主題歌だ。
この映画好きなのよねぇ。
スターと本屋さんの恋。
ロマンチックだわぁ。
帰ったらDVD見ようっと。
「ククク…」
へっ?
恭介さん、何を笑ってんの?
「お前、曲の世界に入り込んでんな」
「えっ?」
「目がうるうるしてる」
「……」
「パパ、うるうるって?」
「ん。今のママみたいな顔だ」
「ママ、かわいいねぇ」
「……」
3歳の息子に「可愛いねぇ」って言われる母親ってどうなのよ。
「ククク…」
笑ってるし。
「涼」
「なあにパパ」
「ママは可愛いか?」
「うん!ママはね、いちばんかわいいの。りょうね、ママがいちばんすきなの」
「ありがとう」
何か照れるわ。
「涼、ママが一番か?パパは?」
…恭介さん、何を張り合うんですか?
「パパもいちばんすき」
「ハハハ…一番が二つあるのか」
「うん!パパもママもおなじだけいちばんなの」
同じだけ一番か。
いい言葉だわ。



