「ほぉ~鰯か」


「はい。母に電話して節分に何を食べるのか聞きました。そうしたら鰯って。鰯だけじゃ何なんで胡麻和えを」


「ん。じゃあ食うか」


「はい。いただきます」


「いただきます。ママ、このおすしたべるときしゃべっちゃだめなんだよね」


「うん、あ、涼」


「なあに?」


「こっち向いて食べないと。今年の恵方は北北西だからね」


涼と二人、北北西(恭介さんに背中を向ける方角ね)を向いてひたすら食べる。


「ククク…」


へっ?


恭介さんの方を見ると


「クククク…ハハハ…」


大爆笑してる。


涼も恭介さんを見て何か言いたそうなんだけど喋っちゃ駄目だからと目を大きく見開いてる。


「恭介さん、どうしたんですか?何がそんなに」


涙を流さんばかりに笑ってるし


「ハハハ…お前と涼が同じ方向を向いて真剣に寿司をかぶってるのを見たら…ハハハ…可笑しすぎる」


「……」


確かに。


涼はまだ食べ続けてる。


「お前は喋ったからアウトだな」


「…恭介さんのせいですからね」


「涼を見習え」


「……」


「ハハハ…膨れんな」


「膨れてません」


ニヤッと笑い


「充分膨れてます」


もう!


「あ~おいしかった」


「涼、食べたの?」


「うん。りょうはちゃんとおはなししないでたべたよ。ママはだめだねぇ」


子どもにダメ出しされた。


「クククク…」


「パパは?」


そういえば恭介さん…


「とっくに食べた」


「……」


ホントだ。


私達が恭介さんと逆の方向を向いてたから気がつかなかった。


「ママだけだめだったね」


「そうだな」


「……」


何か口惜しい。








(この恵方はH24年です)