美乃梨さんの好きな人、そして遥佳様の親友、純さんはとても良い人だった。

美乃梨さんも遥佳様もどちらかと言えば奔放な方だから、純さんはとても普通に見える。

私はまだ、遥佳様専用になったばかりだから分らないことだらけで、先輩に怒られっぱなし。


「なんで遥佳様の部屋にいたの?」

「座れと言われて…」

「素直に言うこと聞いてどうするの?あなたには仕事があるのよ」

「はい…」


ここは遥佳様の家。
私はここで働いているただの貧乏娘。

違いがハッキリしすぎているのにそんな人に対してタメ口なんて聞けるはずがない。


なのにお茶を運んだりする度に引き止められる。

それが嬉しくて怒られることが分かってても、遥佳様の部屋に居座ってしまうんだ。


「佳奈ちゃ~ん、聞いてよ」

「え?」


純さんは毎日、西城家にやって来る。


「親父に殴られた」


そう言って赤くなっている左頬を見せながら苦笑い。

美乃梨さんの両親は美乃梨さんの幸せが一番だからと案外簡単に二人の関係を許した。