「おかえりなさいませ」


優しい笑顔で佳奈が言う。
美乃梨の相手を佳奈に任せて良かった。


「ただいま。あ、こいつ俺の友だちだからあげて良いよ。名前は純」

「純様…?いらっしゃいませ。あ、お荷物お預かりいたします」

「ありがとう」


純が微笑む。
佳奈もつられたように、ニコリと笑った。


「あ、佳奈…あの~…」

「はい?」

「美乃梨はどこにいる?」


なんとなく美乃梨の名前を呼ぶのが気まずかった。

今から純は美乃梨と再会するんだ…。

そう考えると緊張してしまう。


「遥佳様のお部屋です」

「そうか。あ、あれってどこに…確かキッチンの…」

「それも遥佳様のお部屋に」

「え?」


なんで分かったんだろう。

佳奈は「あれ」が俺のお気に入りのティーカップのことだと分かったみたいだった。


「カップでしたら遥佳様のお部屋です」

「あ、ありがとう」

「いいえ」


俺と純は部屋に向う。

その3歩ほど後ろを佳奈が純の荷物を必死に持ちながらついて来ている。