政略結婚、って分かっていても「婚約者」であることには変わりないし、好きな人の将来の妻にこんなこと言われたって、意味が分らないだけだとは思う。


「…私ね、大好きな人がいるの。もちろん遥佳くんじゃなくて。色々事情があって会えないんだけど」

「遥佳様は、ご存じなんですか?」

「ご存じもなにも、彼は遥佳くんの親友だし、私たち三人は幼馴染みだから」

「なんで、遥佳様と結婚するんですか?」

「会社のためよ」


私があまりにも平然とそういったからか、佳奈ちゃんは泣き始めてしまった。


「え、なんで泣くの?」

「ごめんなさっ、美乃梨さん…辛いですね」

「慣れちゃったかな」

「私、絶対に耐えられません」


佳奈ちゃんは大粒の涙を流す。
釣られて一緒に泣きそうになる。


「遥佳くんね、ちょっと変な所もあるけど優しいから。私は佳奈ちゃんを応援する」


佳奈ちゃん。
ごめんね?

今になって考えると、私はきっともっと色々なことが出来たはずなのに。

佳奈ちゃんがあんなに傷付かずに、すんだかもしれないのにねー…。