久々に「純」という名前を聞いた。

自分からも言わないし、私のまわりの人もその名前は口にしない。


会いたくて、会いたくて、会いたくて。

声を聞くこともできない。

父を裏切れないなんてただの言い訳。
ただ、私に勇気がないだけ…。


「美乃梨~…」

「何?」


甘えてくる婚約者。
最高の「親友」だから、心も許せる。


「昨日のパーティ最悪だった」

「なんで?おじ様は楽しかったって回りに言ってるみたいよ」

「父さんは酔ってたからな。優も来たんだけど、終始機嫌が悪くて俺、気使いまくりだよ?」


遥佳くんが私に寄り掛かって来る。
おじ様は、遥佳くんも優くんも溺愛しているけど、優くんは『家族』が嫌みたいで…。


「でも、優くんがパーティーに参加しただけでも私はすごいと思うけど」

「そうなんだけどね」


遥佳くんはため息ばかりついて考え込んでしまっている。


「純くん…」

「え?」

「最後に会ったの2年前だから分んないけど、純くんもパーティみたいな派手なの嫌いだった」

「あぁ…会場とかで見た記憶があんまりないかも」