それを見て、自分が言い過ぎていることに気が付く。


「…ごめん」

「良いよ。私も悪いから」


美乃梨には初恋の人がいる。
もちろん、俺じゃない。

相手は、それなりにお金持ちだが、何故か松永家と対立している家のご子息だ。

美乃梨は父親に反対されて、会うことすら許されていない。


「美乃梨は美乃梨で辛いんだもんな」

「私は大丈夫だけど…今日の遥佳くん何か変だよ？」

「優のせい」

「え、優人くん？」

「最近、急に大人っぽくなってさ」


そういうと、美乃梨はクスクスと笑い初めてしまった。

美乃梨と結婚すれば、会社だって上手く行くし、家庭も幸せいっぱいになると思う。

だけど、美乃梨から俺に対しても、俺から美乃梨に対しても「幼馴染みの親友」くらいの気持ちしか持てない。


「お兄ちゃん、頑張って」


バカにするように美乃梨が言う。
その笑顔はものすごく可愛くて、でもそれに対して愛しいや守りたいと言った感情が生まれたことはない。


「うん、頑張る」

「もー、誰よ」


バシッと軽く、美乃梨が俺の腕を殴る。