「いや、ただいつもと違うなーって。意外と似合ってるじゃん」

 高が何だか優しかったので、私はさらに「うるさいっ」と言い返した。

 実はこのワンピースは、陽菜と一緒に、来季とのデートのために選んだものだ。つまり本当は、来季に一番に見せるつもりだった。

 さらに、このデートは断るつもりでいた。けれど高に言いくるめられて(付き合っているのにデートしないのは怪しいと思われるって、紗理奈はそういうの気にするし、などと言われた)、一度だけという約束で来ることにした。それに、誘ってくれたこと自体は嬉しかった。

 そして、いくら嘘とはいえ、デート中に他の人のことを考えられるのは私だって嫌だ。だから今日は来季のことは忘れて、高と楽しもうと思う。

「よし、どっか行くか」
「うん」

 私と高は並んで、町中へと歩き出した。