そして放課後、理科準備室に向かおうと教室を出たとき、おい、と誰かに呼び止められた。反射的に振り返ると、少し目つきの悪い高がこちらを見下ろしていた。

「どこ行くんだよ。今日部活ないから一緒帰るって言ったじゃん」
「あっ、そうだっけ?」

 さらに機嫌の悪くなる高を笑ってごまかしつつ、その場を去ろうとする。がしかし、腕を掴まれてしまった。

「高?」
「……」

 強い力だった。高は何も言わなかったが、その沈黙が逆に怖かった。

 薄々気付いてはいたけれど、最近、高がおかしい。前はちゃんと私の話も聞いてくれたのに、――その前は聞く気も無さそうだったのだけれど――最近は口調もきつい気がする。