「陽奈、待って……!」

 ようやく出た声は弱々しくて、きっと陽菜には届いていなかった。それでも、追いかけなくちゃ!

 急いで教室を出ようとしたとき、入ってこようとする誰かにぶつかった。

「ご、ごめんなさいっ」

 顔を上げると、不満そうな顔をした高が立っていた。

「いってぇなー。っておい、泣いてる……?」

 私を見た瞬間、高の表情が変わる。それに安心したのか不安になったのか、とうとう私の目からも涙が溢れてきた。

「どうした?何かあったのか?」
 私はそのまま、高の胸に倒れ込んだ。泣き声が聞こえないように、声を押し殺してすすり泣く。人だかりなんて、やじうまなんてどうでもいい。

 私は、陽菜に嫌われた!絶望のような何かがグッと私に押し寄せてきた。

 高の手が、私の背中をさする。私の頭を撫でる。それらの仕草は、落ち着くまでつきあうよ――そう、言っているように思えた。

 ああ、ねえ……。
 私はどうしたらいいの?