エピローグ


外は真夏日だというのに、その部屋の中は異常に涼しかった。
いるのは二十代後半の女性と、男の子だけだ。

「あ、ママ、溶けてるよ」

ああ、ごめんね、と穏やかそうに微笑んでいる女性が小型冷蔵庫を取り出した。

彼女は編み物の手を止めると、徐に冷蔵庫に顔を突っ込んだ。

「涼しいお部屋なのに溶けるの?」
「胸が熱くなっても溶けるのよ」
「ママ胸が熱いの?」

――貴方を見ているとね、思い出すの。

男の子は首を傾げて母親を見つめた。