これなら彼女に見せないで済む。
彼女を悲しませないで済む。

彼は、彼女の口があったのであろう場所に、そっと口付けた。
彼女の溶け続ける顔が赤らむ。

唇についた彼女を舐めると、かき氷よりも濃いいちごミルクの味がした。

手がなくなり、溶け続ける彼女を支えるものがなくなった。
彼女がぱしゃ、と音を立てて川に落ちる。

それ以降、耳は聞こえないので、きっと耳もなくなってきたのだと思う。

徐々に視界が薄暗くなっていく。
もう一度口付けようとしたが、無理だった。
もう口も目もなくなっていたからだ。