彼女に目をやると、目と鼻がなかった。
頬に触れると、彼女がとろりと指についた。
口に含むと、いちごミルクの味がした。

「いちごミルクの味だ」
「嫌だ、やめてよ恥ずかしい」

もう一度、彼女の頬に手を伸ばす。

――手はなかった。

確かに伸ばしているはずなのに、ない。
触れている感覚もない。
彼女の頬に、影もない。

「もう半分以上溶けてるね」

彼は何事もなかったかのように彼女に話しかけた。
彼女が頷いた、気がした。
もう口も顔もない。
頭と首と体の区別もつかない。