川は相変わらず冷えていて、こんな暑い日に川遊びをするには最適だった。 「ほら、あそこに魚いるよ!」 「そこにも! でっかいねぇ!」 女の子は楽しそうに魚を追いかけた。 彼と彼女はそんな女の子を眺めて笑う。 「あれなに?」 不意に女の子が、魚の少し先を指差した。 「あぁ、あれ、アメンボ」 「水面泳ぐ虫さんだよ」 女の子の声を聞いたのは、これが二回目だった。 極端に無口だが、ちゃんと普通の子供なんだな、と彼は安心した。