「何かでね、虹みたいな蛇がいるの」
「何かって何だよ」
「この前幻獣辞典で見たの!」

変なの読んでるな、と思いながらも、彼は虹蛇を想像してみた。
虹色で、長くて、美しい蛇。

「確か、その蛇が虹を作るんだって」
「じゃあ今の虹も蛇が作ってるの?」
「そうかもしれないね」

あたし自分で作ったと思ったんだけどな。
彼女は残念そうに呟いて、また水を蹴って虹を作った。

「綺麗だね」
「うん。あたし虹好きだな」
「僕も。雨は嫌いだけど」

その日、淵添え川には二つの小さな虹が架かった。
二人が作ったのか、虹蛇が作ったのかは分からないけれど。