「あ、てめっ…」
「誰もそうだなんて言ってないじゃん!」
「じゃあ、どういう意味だよっ!?」
「内緒ーっ!」
「やっぱりてめっ…!」

 私は悲鳴を上げて翔から逃げる。やっぱり、なんだかんだ言ったって、私にとって翔は特別だ。

 本音で喋れる男子なんて、多分翔くらいだ。他の男子とはこうもいかない。あ、前言撤回。男バスにもう一人いるんだった。翔の親友の神岡あかね、すごく美少年なんだ。あかねとも本音で喋れる。

「あーっ、美衣がまた夫婦喧嘩してるよ、真樹!」

 げっ…。スクールバッグを振り回し、こっちに来るのは親友の前橋花梨(まえはし かりん)と織部真樹(おりべ まき)の二人。

「ホントだー。美衣、昼間っからラブラブだねー」
「花梨、帰るぜ。二人を引き裂く仇役にはなりたくないし」

 ……。一体、いつの時代の話なんだろう。っていうかたすけてよ!!

「おい、真樹。どういう意味だよ?」

 翔が少し頬を赤らめて。赤らめないの、馬鹿っ!
 とりあえず私、花梨の後ろに周りこんだ。