あの日、保健室で

「芹菜って呼んでやるよ」

と言ってくれたのに、

結局、一度も

私を名前で呼ぶことも、

顔を見ることすらなかった。


「……呼んで欲しかったのにな」


周りに聴こえないように

小さな声でぽつりと呟く。


クラスメイトたちは

ほとんど帰ってしまったようで、

人影もまばらで閑散としている。


私はなんだか

このまま帰る気持ちになれなくて、

ポケットから

携帯電話を取り出した。