やっぱりバイト先での高橋くんが、

本当の彼の姿だったんだ。


学校でずっと見つめ続けてきた

高橋くんは、

高橋くん自身が作り上げた

『嘘』の高橋くんだったんだ。


ぼうっとする頭の中で、

私はぼんやりと想いを巡らせる。


学年、いや学校中に

認知されているウソタの『嘘』と、

みんなをばっさりと

裏切るような高橋くんの『嘘』。


言葉としては同じだけれど、

その重みや意味するものは

かなりの差がある。


しばしの間の後、

ウソタが後ろを

振り返ることなく静かに、

でも鋭く告げた。


「これ以上、芹菜を

 困らせるんじゃねーよ。

 ……保健室に連れて行く」


言い終わるのと同時に、

ウソタがゆっくりと歩き始める。


さっきよりもしっかりと

支えるように私を優しく抱えながら。