「冗談じゃ、ないよ」


透き通るような

清らかな高橋くんの声に、

体育館中がしんと静まりかえる。


これまでの学校生活の中で、

高橋くんが自分の感情を

これほどまでに出したこと

なんてない。


その感情が、まさか恋心だとは、

学年のみんなも先生方も

想像してなかったはずだ。


私だって、こんなこと

言うなんて思ってなかった。


高橋くんの思いがけない一言に、

ウソタの足がその場に張り付く。


みんなが息を押し殺す状況の中、

ただ一人、

高橋くんだけが、突然、

はじけたように豪快に笑い始めた。