「サンキュな、ヒロ」


高橋くんに向かってそう告げると、

ウソタは私を気遣うように

ゆっくりと歩き始める。


あまり揺れ動かないように

細心の注意を払いながら。


体育館を一歩出たところで、

ふとウソタの足が止まる。


そして少しだけ

頭を後ろへと傾けてから

口を開いた。


「ヒロ。さっき、お前、

 芹菜のことがスキだとか

 言ってたよな?

 冗談なんていうなよ。

 お前みたいな優等生が

 言っていい冗談じゃねーぞ」


言い終わると同時に、

ウソタが再度ゆっくり歩き始める。


しかし、今度は

高橋くんに呼び止められる

ことになった。