その時だった。


「高橋くん!」


甲高い女の子の大きな声が、

高橋くんの足をぴたりと止めた。


その声に返事をするように、

高橋くんがゆっくりと

みんなの方へ振り返る。


「はい」


呼び止めた女の子の声、

聞き覚えのある声な

気がするけれど……。


でも、高橋くんに

抱きかかえられている状態では、

その女の子の姿を

ハッキリと確認することは

出来なかった。


「高橋くんは、

 芹菜のこと、スキなの?

 スキだから、

 そうやって保健室へ連れて行くの?

 6組の保健委員に頼めば

 いいだけの話じゃない!」


“芹菜”―――?