チョコレートトラップ

ただでさえ人前に

立つことが苦手なのに、

私の前に高橋くんがいることで、

さらに前を向くことなんて

出来なくなる。


深く頭を下げ続けるしかない私は、

早くこの時間が終わるのを

ひたすらに祈った。


高橋くんには近付かないようにと、

凛と一緒に頑張ってきている

というのに、

学年主任の思いつきから、

あと数センチまで

近付いてしまっている。


まだ身体も本調子じゃないのもあって、

だんだんと頭の中が

ぐつぐつと音を立てて

熱くなっていく。


「じゃあ、卒業式は

 お前たちに任せるからな。

 1組から順番に席に戻りなさい」


ようやく学年主任から

解放の合図が出されると、

1組から順に元の場所へと戻り始めた。

私も自分の席へ戻ろうと

足を動かしたその時だった。


ぐらりと身体が揺れたかと思うと、

血の気がすうっと引いて

意識が遠のく。