「もういいかな?

 私、帰るから」


「僕、磯貝さんのこと

 気に入っちゃった」


今までの声のトーンと一変して、

無邪気な子どものように

声を上ずらせる。


今、高橋くん、何て言ったの……?


“私のことが、気に入った”?


その言葉に、歩いていた足を

ぴたりと止めて、ふっと振り返る。


視線の先には、

ふんわりとした微笑みをした

高橋くんが少し首を傾げていた。


私と視線が合ったのを確認して、

高橋くんが言葉を続ける。


「磯貝さん、カワイ過ぎて

 僕、気に入っちゃった。

 爽太の彼女じゃないんだったら、

 僕、磯貝さんのこと狙っちゃうよ」


高橋くんの言葉が、

上手く飲み込めず私の頭上を

ふわふわと舞う。


固まったままの私をそのままに、

高橋くんは私に向かって

さらにこう告げた。


「僕、本気だからね」