チョコレートトラップ

特に何も見るワケでもなく、

ゆっくりと店内を回り始める。


私のスキなナチュラル系の

洋服が並ぶ店内。


でも、今の私には

洋服になんて眼中にない。


高橋くんに逢いたい、

ただそれだけだったから。


なるべく他の店員さんに

変に思われないように、

時々、洋服を手に取りながら

一歩一歩、進んでいく。


そしてもうすぐ、

反対側までたどり着こうとした

時だった。


「ご来店いただき、

 ありがとうございます」


身体をふわりと包み込むような

温かな声が私の後ろを通り抜けた。


その風に惹かれるように、

ゆっくりと振り返る。