チョコレートトラップ

「いらっしゃいませー」


鼻にかかる甘い声を響かせて、

女性店員が声をかける。


洋服に手をかけながら、

私はお店をぐるりと見渡す。


たった今、声を掛けてきた

店員さんの他にもう1人

いるのが見える。


でも残念なことに、

その店員も若い女の子だ。


「……だよね。

 都合よくいるワケ、ないよね」


意気込んで高橋くんの

バイト先のショップまで来た自分に、

ふふっと笑う。


胸が苦しくなるほどに

高鳴る鼓動が、

虚しくさえ感じ始める。


そりゃ毎日、高橋くんが

ここでバイトしているはず、

ないよね。


せっかく来たんだし、

店内を軽く1周してから帰ろう。


そう思って、

ショップの端の方から

ゆっくりと歩き始めた。