いつもより早い

帰宅にも関わらず、

母親は穏やかな笑顔で

迎えてくれた。


「おかえり、芹菜」


玄関まで迎えてくれるなんて

珍しいと思いつつも、

私は小さく頷くだけで

自分の部屋へ行こうと

階段に足をかける。


「どうしたの?

 そんなに急いで」


そんな私の行動が

不思議に思ったのか、

母親が少し声を張って問いかける。


駆け上がる足を止めることなく、

「凛を駅で待たせてるから!

 ちょっと帰り、遅くなるかも」


と、たたみかけるように

早口に答えた。