チョコレートトラップ

その衝撃は、私の右側に

激しい痛みを感じさせた。


「悪ぃな」


半笑いな声で心にもない

言葉を投げかけ、

駆け下りていく。


―――そうっか。

誰かとぶつかったんだ。


―――きっと、相手は

身体の大きい同学年の男子生徒

なんだろうな。


そうようやく理解したものの、

そのあまりの衝撃に、


傾いていく身体を

止めることが出来ない。


私の身体が階段上を

ふわりと宙を待っていく。


まるでスローモーションに

なっているかのように、

全てがはっきりとした意識の中、

このまま意識を失って

しまうんだろうとぼんやり思う。


階段の角に頭を強く打ち付けて

その場に倒れて、

でもきっと誰も

私のことを助けてくれる人は

いないんだろうな。


私はぎゅっと固く目を閉じ、

その鋭いであろう痛みが

来るのを覚悟した。