誰にも気にせず、

凛と楽しくて心安らげる時間を

少しでも長く過ごしたい一心で。


視線を落としたまま、

人の波をかき分ける。


屋上へと続く階段へと

差し掛かると、

私は誰にもぶつからない様に、

階段の左端へ足を運ぶ。


階段の真ん中だと、大抵、

お喋りしながら歩く子が

占拠してるから。


右端は階段の最短距離コースなので、

せっかちな子が

バタバタと大きな音を立てながら

利用することが多い。


だから、比較的安心で

安全な左端を使って、

なるべく誰にも目を合わせないように

足元を見ながら駆け上がる。


順調にスタスタと

軽やかに上がっていく。


やっぱり私の思っていた通り、

左端はあまり利用する人は

いないみたい。


そう思いながら、

屋上まであと少しと迫った時だった。


ガコン、と鈍くて重い音と同時に、

私の身体に、

とてつもなく大きな衝撃を感じた。