「そう、かなぁ。

 ただ私は、親に

 心配かけたくないから、さ」


例え学校でどんなことがあっても、

両親には心配をかけたくない。


楽しく高校生活を

送っている様子を見せるのが、

両親への親孝行だと思うから。


「芹菜ってば、

 泣かせること言うねー」


凛が涙を拭うかのような

仕草を見せて言う。


そんな……、こんな事、

たいしたことないと

思うんだけどな。


ふと気付くと、

私たちはもうすぐ学校の正門を

くぐろうかというところだった。


自分自身に気合を入れるように

小さくこくんと頷く私の手を、

凛が温かくて柔らかい両手で

そっと包み込んでくれた。


「大丈夫。

 私がいるから、ね」


凛の最上級の笑顔に、

私はもう一度、

今度は大きく頷いた。


「ありがと、凛」