花柄をモチーフにした

ショップのロゴが入った袋を

手にし、

私は駅のホームで

電車が来るのを待っていた。


あれから、

暴れ狂う私の鼓動で

どうにかなってしまいそうな私に、

高橋くんは本当に

ワンピースの代金を

受け取ろうとはせず

この袋を差し出した。


「また、洋服を見にきてね」


赤く染まった耳にそうっと囁くと、

高橋くんは瞬時に店員の顔に

戻って滑らかに言葉を続けた。


「ありがとうございました。

 またお越しくださいませ」


深く頭を下げる

高橋くんに見守られながら、

私はたどたどしい足取りで

そのショップを後にした。


今、思えば、高橋くんにちゃんと

「ありがとう」と

言ってなかったな。


その時の私には、

そんな心の余裕なんて

なかったけれど。


でも、せっかく

優しくしてくれたのに

お礼も言わなかったなんて、

やっぱり失礼なことを

してしまったな。


そんなことを思いながら、

高橋くんから貰った袋を

軽く前後に振ってみる。