一目惚れした洋服が

外れたことは、

今まで一度もなかった。


今回のこのワンピースも、

私には少し可愛すぎるかと

思ったけれど、着てみると

馴染んで映った。


「ん、いいかも」


気分転換にぶらぶらしているし、

予算内であれば

買う予定でもあったし、

それに高橋くんのバイト先の

ショップでもあるし、

勢いでこのまま買ってしまおう。


着替え終わると、

フィッティングルームのドアを

ゆっくりと開ける。


「いかがでしたか? お客様」


待ち構えていたのか、

高橋くんがさっきの

甘い笑顔を見せて声をかけた。


「これ、お願いします」


ふんわり微笑む高橋くんに、

試着したワンピースを差し出す。


どうせ買うのだったら、

デートの時に着てみたいけれど、

残念ながら今の私には

そんな相手なんていない。


そう思うと、

ほんの少し心が沈んでしまう。