ショップ奥にある

フィッティングルームに着くと、

高橋くんはドアを開けて

にっこりと笑った。


「どうぞ、ごゆっくり

 ご試着ください」


「は、はぁ……」


試着するつもりなんて

全くなかったけれど、

ここまで案内されてしまっては

「大丈夫です」なんて

言えなくなっちゃう。


促されるまま

フィッティングルームに入った私に、

「終わりましたら、

 お声をおかけくださいね」

と甘い笑顔を残して

高橋くんがドアを静かに閉めた。


外に聞こえないように

小さく溜め息をつく。


一目惚れのワンピース。


私の予算にもおさまるし、

確認するためにも着てみようかな。


鏡に映る自分自身に

言い聞かせるように

こくんと頷いた。