チョコレートトラップ

高橋くんの側を

可愛らしいお客様が通る。


すると慣れているのか、

さっき私に見せた微笑みを

つくって「いらっしゃいませ」

と挨拶をした。


そして自然な流れで

私へ視線を戻して、

囁くように言葉を続けた。


「てっきり磯貝さんも、

 “僕目当て”なのかと思ったよ」


「“僕目当て”……?」


きょとんとした顔をして

繰り返す私に、

高橋くんは小さく頷いた。


「ココにくる女の子たちは、

 ほとんどが“僕目当て”なんだ。

 ショップに興味がある

 ワケじゃない。

 僕に逢って、そして

 マシンガンのように一方的に話す、

 それだけ」


そう言って、さっきとは違う

微笑みを見せる高橋くん。


その表情が寂しそうに映る。