チョコレートトラップ

「た……、高橋くん!」


私の目の前で微笑んでいる

その人は、

紛れもなく、私が

思いを寄せている

高橋くんだった。


高橋くんと話すのはおろか、

近付いたこともなかった私には、

今、この状況が

上手く飲み込めずに

ただ高橋くんを見つめるだけだ。


そんな私に高橋くんは

微笑みを絶やさずに言葉を続けた。


「確か……、同じ学校の

 磯貝さん、だよね?」


周りの店員に聞こえないほどの

小さな声で囁く高橋くんの声が、

私の身体にビリビリと

電流を走らせる。


いきなりこんなシチュエーション、

私にはまだ早いって……。


激しく暴れる心臓に、

声も出せずに高橋くんを見て

こくんと頷く。


「初めてだよね?

 磯貝さんがこのショップに来たの」


それまで微笑んでいた顔を、

いつも見慣れている顔に

戻して訊いてきた。