でも、そんなこととは裏腹に臆病な自分がいる。
とても情けない話だ。
…でも、誰もが経験者のはずだ。

優香は可愛い。
頭もいい。
みんなからも好かれている。
女の子からも、男の子からも。
だから、きっと俺なんか…。

そんな臆病な自分にいつも負けている。


そして、
「全く、晴彦の馬鹿!」
今回も負けてしまった。


健三は俺を見ても無表情のまま。
健三の言いたいことはわかっている。

そう、俺は駄目なんだ。
飲みきったビールの缶に力を込めることしかできなかった。

握りしめたビールの缶は自棄に冷たく、俺を冷静にさせた。
こんなことを繰り返しているうちにいつか本当に言えなくなってしまうのではないかと思う。
大学を卒業して、社会人になる。
社会人になれば必ずそれぞれの道を進む。
そしたら…どうなることくらい、わかっている。

「守、とうもろこし食べる?」
今度は優香が俺にとうもろこしを手渡してきた。
優香はもういつものように俺に接する。
そんな感じがまた俺は嫌だった。
でも、どこか安心もしている。
「ありがとう。」
好物のとうもろこしこも今は興味ない。

結局、今日も俺たちには何も進展はなかった。
バーベキューの火が消えかかる。
それはバーベキューの終わりを意味する。
けれど、
「ウッドハウス、あっちだって!」
美保が指差し言う。

今日はこのまま併設されているウッドハウスに一泊することになっていた。
「じゃー俺らで片付けしとくから、先に行ってて。」
「りょーかい!」
優香と美保を先に行かせて、男子チームでバーベキューの後片付けをすることにした。

ここへ来たときは真っ青な空が広がっていたが、今は夕暮れ。
「この片付けが面倒…。」
と愚痴を言いながら晴彦は片付ける。
「文句言うな、一番食べたの晴彦だろ?」
健三の厳しい一言。
「…てかさぁー。」
冷めきった炭を集めながら晴彦が、
「なんで、優香に告白しないの?」
その質問は唐突だった。
けれど、予期はしていた。
「確かに。守、どうして?」
健三もこのことに関しては聞きたかっただろう。

「それは…。」
答えことができない。
答えは自分でわかっている。
だからこそ、答えられない。
「優香が可愛そうだぞ。」
晴彦の言葉が胸に刺さる。

晴彦の素直さが欲しい。
そうすれば、もっと簡単に言えるのかな?なんて思う。

「…でも、優香は俺のことなんか…。」
きっと友達くらいにしか思っていない。
「でも、言わなきゃ伝わらないぜ。」
「そうそう。」