それにしても…不思議な話だ。
文学研究サークルがバーベキュー。
…なんか、違う気がする。

そもそも、俺がこのサークルに入ったのは文学が好き!というより逆だ。
いや、嫌いなのではない。
書く方だ。
読むよりも書く方専門だ。
…ま、趣味程度のものだけれど。

だから、別に入る気はなかった。
ただ、
「おい、守!早く火つけるぞ!」
晴彦。
こいつがほぼ強引に俺をここへ連れてきた。

「守、ぼさっとしないの!」
そしたら優香までいるときた…。
優香は俺が物書きが好きなのを知っている。
だから、別にここへ来たことに疑問は無かったようだ。
優香自身は文学部へ進学するくらい文学が好きなのだから、当然ここへ来るのは予想していた。

だからこそ、少し抵抗があった。


木炭に火をつける。
火はだんだんと強くなっていく。
団扇で火おこしすなんていつ以来だろう。
よく幼い頃祖父の家でやった記憶が体の奥に眠っている。
あの頃はこんな単純作業も楽しかった。
今は少々苦だ。
なんたって…暑い!

「しっかり扇げー!」
向こうのテーブルで食べ物の準備をしている女子チームが楽しそうにちゃかす。
「そーだぞー。」
「晴彦!お前も手伝え!」
隣に座ってばかりの晴彦に渇をいれてやった。

扇ぐのは俺と晴彦、健三でローテーションを組み、行った。
「こんなもんだろ?」
「…だな。」
俺が健三に確認をとる。
健三は燻っている木炭に手を翳して満足気に言った。

「おっ、できてるじゃーん!」
最後の下拵えができたよくで、美保が食べ物を運んできた。
綺麗に調えられた食べ物がトレイに並んでいた。
脂の乗った肉、みずみずし野菜。
どれもこれも美味しそうだ。
「んじゃ、焼こうぜ!」
晴彦がすかさず菜箸を振るった。

「ちゃんと守の好きな“とうろもこし”買ってきたんだからね!」
突然、優香が俺に自慢気に言ってきた。
が、変だろ…とうろもこしって、
「昔から言えないな。」
今日はじめまして優香を馬鹿にできた。
「とうもろこし、だろ?」
「あれっ?」
優香の頬がいっきに真っ赤になる。
透き通るほど白い優香の頬。
それが真っ赤になる時は決まって、
「ど、どっちでもいいでしょ!」
と俺をどつく。

…いっつも、どつかれる。

「優香、それは言えないと恥ずかしいよ。」
あまり説得力のない美保が言う。
けれど、だからこそ尚更、
「美保に言われるなんて、ショック。」
となってしまう。

「ま、どっちにしろ早く焼こうぜ!」
こういうところは晴彦らしい。
「はいはい、焼くぞ!」
と仕切るところは健三らしい。