大学に着く。
ここ【帝政大学】は自分で言うのも変だが、まあまあの大学ではないかと思う。
所謂…中の上。というやつだ。

全国でも割りと人気のある大学だと思う。

なにより、最近改築したらしくキャンパスが綺麗になったのが人気の理由らしい。
…大学ってそんな理由で決めていいものなのか。
と、過去の自分も含め疑問に感じる。

甲斐さんの研究室は管理棟の五階にある。
他の研究室がどうかはしらないが、俺は好きだ。
窓からの眺めは綺麗だ。
西にあるため、丁度夕陽が見える。
俺はそれが結構お気に入りである。

そんなこんなで、俺たちは甲斐さんの研究室まで来た。
札は、やはり在室だった。

研究室の部屋を開ける。
中にはところ畝ましと古い本が並んでいた。
その本の中に埋もれるようにいたのが、
「甲斐さん。」
甲斐優人だ。
本に目を向けているようだ。

「ん?なんだ、君たちか。」
と来たことに不快感はないようだ。
再び本に目を戻そうとしたが、直ぐにこちらの方を向き直した。
「誰だ、その女の子は?」
当然の反応といえば当然だ。
いきなり見たことのない人が俺たちと一緒に来たのだから。

「あぁー友達です。」
月から来たお姫様です、なんて口が避けても言えない。
言ったら…甲斐さんが面倒に食い付く。

「なるほど。…で、何しに来たんだ?」
と素直に納得したようで、問いただすこともなかった。
「実は、先生にお聞きしたいことが。」
「私に?」
甲斐さんはそう言う優香の前に立ち上がった。
…妙に近い。

「あっ、これ、お茶菓子です。話ながらお茶でもします?」
とその場しのぎのような感じがモロに出ているが、甲斐さんは気づいてないようだ。
もしかして、お茶菓子ってこのための回避策なのか?

優香が給湯室にお茶を作りに行く。
そういえば、いっつも優香がお茶いれてるな。
…今度、手伝うか。

甲斐さんは大学でも一二を争うほどのフレンドリーな先生である。
学生みんなから慕われている。
その一方で…単位の取りやすい奴というのでも有名であった。

そんなこともあるのか、いつの間にか瑠奈とも仲良くなっていた。
既に、笑い話が絶えていない。
一体、何を話しているのか…。

と、ふと目を室内のテーブルにやると今朝の朝刊があった。
一面の見出しが見えた。
『都内で多数の意識不明者、原因は不明』
とある。
アパートの前で聞いた事件のようだ。
一面になるほどのニュースだったんだ。

俺は徐に新聞紙に手を伸ばし、その記事を読んだ。