でも、健三の計らいでステージは整った。
あとは…、
「みんな、急にどうしたんだろうね?」
不思議がる優香に想いを伝えるだけだ。

俺は立ち上がり一度星空を眺めた。

広がる世界は広すぎて目が眩みそうになる。
今、言おうとしていることがちっぽけなことのようにも思える。

「どうした?」
優香も立ち上がった。


頭上に星が流れる。
きっと流れ星の願いは叶うさ。

流れ星が翔る今夜は少し寒い。
決した外気が冷たいわけではない。

「どうした?」
優香は俺が少し震えているのを分かっているかのように優しく聞いた。
「あのさ…、」
「うん?」
がんばれ、なんて声は聞こえないけれど、きっと健三たちは言ってくれているはず。

「流れ星、綺麗だな。」
「うん。」
静かな夜に自分の鼓動が自棄に響く。
「俺さ、」
優香はもう何も答えなかった。
ただ、俺が言い終わるのを待っているかのようだ。

「俺さ、実は!」
と言いかけた時、
「ちょ、ちょっと待って、あれおかしくない?」
「は、はい?」
思わず声が裏返ってしまった。
このタイミングで?なんておもってしまった。
でも、真剣な表情で夜空を指差す優香にそんな事は言えず、
「あれ、あれ!」
「なにが?」
と、釣られて優香の指差す方を向いた。

そこにあったのは流れ星。…か?
「やけに近くない?」
と優香。

確かに、流れ星にしては大きい。
大きく光なにかが明らかにこちらに近づいてきていた。
しかも、速い。
「危ね!」
「えっ?」
人間の本能ってやつだろうか。
危険だと思った俺は咄嗟に隣にいた優香の手を握りしめ、その場から逃げた。

その瞬間、地面が叫んだ。
何かがぶつかる音、紛れもなくさっきの星。
「な、なんなの?」
優香は怯えるように言う。
俺にも分からない。
隕石?そのくらいしか思い浮かばなかった。
砂煙の向こうに何があるのか…きたいと不安が入り交じる。


「おい!今のなんだ?」
あれほどの衝撃と音だ。
健三たちもすかさず戻ってきた。

「おい、守…今のって…って。」
何かに目線を落とす健三。
それが何かすぐにわかった。
「ちょっと、何どさくさに紛れて握ってるのよ!」
優香に怒鳴られ振りほどかれた。

咄嗟だから自分でも気がつかなかった。
俺、優香の手を握っていた。
はじめてだ。

「どさくさ紛れとはなんだよ、助けたのに。」
どさくさ紛れとは酷い言われようだが事実。
「助けられた覚えはない!」
と顔を真っ赤にしながら言う。
なぜ、そんなに顔赤くしてるんだよと思った。
「怪我ないか?」
一応聞いてみた。
「うん。」
二つ返事だった。

どうなってるんだ、こんなタイミングで何が落ちてきたんだよ。と落下地点の方を向いてみる。
「晴れてきた…。」
美保が言う。
確かに、砂煙が晴れてきた。
俺たちは固唾を飲んでその様子を伺った。