「彩、忘れ物」 そう、これ。 「ありがとう。今ちょうど困ってたところ」 誠治が呆れたように眉を下げた。 「お母さんがさ、彩が間違えて定期持って行ったって言ってたんだ」 「わざわざ来てくれたの?」 すれ違うサラリーマンが私たちを異様なものを見るような目で見ていた。