何時間くらいこうしていただろう...

お日様が丁度あたしたちの真上を
通り過ぎている
きっと六時限目が終わったくらいだろう

すると侑斗がいきなり立ち上がって
伸びをした

「ん~!!」

あたしは起き上がって
伸びをしている侑斗の横で、
チョコンと体育座りをした

「ねぇ、侑斗これからどうする?」

「そうだなぁ...」

「部活ないし帰ろっか」

あたしは立ちあがって
ドアノブへと手をかけた


グイッ



その時侑斗があたしの腕を引っ張った

「キャッ!!ちょっと侑斗~、危ないじゃん!!」

「ゴメン、ゴメン」

そう言って侑斗は悪戯っぽく笑った
またその笑顔...ずるい

「で、何?」

「この後さぁ、用事とか無い?」

「無いけど...?」

侑斗は少し間を開けて
口を開いた

「走りたいから付き合って」

「え!?」

侑斗はそう言った瞬間、
あたしの腕を掴んでグランドへと駆け出した

「ちょっ、侑斗速い!!!」

さすがはうちのエース...
めっちゃ速い

あたしは足が縺れそうになりながらも
付いていくので一杯一杯...

そんなあたしに侑斗は気づいたのか
メッチャ笑ってる...

「ほら恭、前見ろよ!!」

「えっ...?」

またそんな無茶を...
あたしは息が切れて
真っ赤になった顔を上げた

「わぁ...」

あたしはその景気に
自然と笑みがこぼれた

グラウンドに着くと
侑斗は徐々にスピードを落として
息を整えた

「見たか!恭!!めっちゃ綺麗だったろ?」

無邪気な笑顔を見せる侑斗に
あたしは今日一番の笑顔で頷いた

「うん!!!」

そう、侑斗と走った時の景色は
今でもはっきりと思い出せる

建物が後ろへと流れていく
風が頬をなで、まるで自分自身が
風になったみたいだった...

「俺はあの景色が、走っている時のあの景色が、大好きなんだ」

「そっか...」

それから侑斗はひたすら走り続けた
やっぱり侑斗は走ってる時の顔が一番良いよ
ずっとあたしの前で走っててね...