先生は渋々、田原を席に座らせた。
「んー・・・振り出しに戻ったな」
「初めっから解決してるんですってば」
面白く無くなった先生は、
向井に他に無くなったものはないのか?と聞くと。
「ありますよ」
先生の目が再度楽しそうに輝いた。
「他に何が無くなったんだ?」
「お弁当でしょ。んで、ポテチと先生から掠め取った氷砂糖」
「ほー。ポテチと先生からとった氷砂糖ね・・・・え?」
教卓に戻りかけていた先生の足が止まった。
「先生って俺?」
「はい」
「俺の氷砂糖?」
「はい」
白衣のポケットに手を突っ込んで、しばらくごそごそとした後。
「いつ盗った?」
「昨日の授業の時です。
先生の口の中、何か入ってるみたいだったから、
黒板に書きに行った時にちょっと貰いました」
「あげてねーよ。返せ。俺の氷砂糖!」
「だから、今無いんですってば」
「おい!大島!さっさと出せ!」
結局先生も、犯人は大島君で決まってるじゃないですか!
「いや。俺は弁当しか盗ってません」
言い切る大島。
でも、全然胸を張って言えることではない。
「じゃあ俺の氷砂糖はどこいったんだよ?」
「あと、ポテチもです」
「ポテチはあれだろ。小西あたりがついつい食べちゃったんだろ」
小西とは向井の隣に座る、食べたい盛りの男子生徒。
「小西が?」と、向井は隣を向いた。
すると、小西。
「全部食べる気は無かったんだけどね」
「当たってるんかい!」
自分で言った割りに驚いた先生は、調子に乗ったようで。
氷砂糖の犯人も当てるぜ!と、考えをめぐらせる。
「分かった。水島先生だ」
水島先生とはこのクラスの副担である女教師だ。
「なんで水島先生なんですか?」
尋ねる向井にフフンと鼻を膨らます。


