そろそろと、ドアの前から退けば、直ぐにそれは開かれた。
あたしは悠は背を向けたまま、座り込んでいる。
「ねぇ、陽菜」
「なによ」
「泣かないで?」
誰のせいよ、憎まれ口でも叩いてやろうと思ったけれど。
あたしは驚きで声が出ない。
悠の腕が、あたしをキツいくらいに抱き締めるから、胸を苦しめられる。
それがなぜなのか、考えれば、やっぱり悠のせいだと思う。
「…どうして悠は…、」
左耳に感じる悠の髪の毛が、いつもより愛おしい。
「どうして悠は、こんなことするの…?」
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