「…悠とは、もうキス…なんて出来ないよ…」


あたしの言葉に、悠はピタリと動きを止めた。


視界を霞める涙は、瞬きの度にボタボタと落ちるけれど、悠がぼやけてよく見えない。


もうこんな距離で、悠を見つめることはないだろうから、よく焼き付けておこうと思ったのに。


「……ごめんなさい…、…もう出来ないの…」



あたしがもう一度言うと、左頬に添えられていた、悠の右手は力なく落ちた。


「…そっか。」


そう言って立ち上がった悠を、あたしは呼び止めることすら出来なかった。