あたしが彼にしたのは、悠がされたようなキスじゃない。
まぁ、もちろん、そんなキスをあたしが出来るワケがない。
そう、やっぱり、言うなれば
“幼稚園児キス”ね。
でもそんなキスでも、男はあたしがネクタイを離すと。
真っ赤な笑顔で、へなへなと座り込んだ。
「…あの、もしかして……付き合ってくれるんですか…?」
あたしはそんな男に、優しく微笑んであげる。
それはそれは、天使なんじゃないかと言われるくらいに。
「あたしにとっても“あんなヤツ”なんだけど、ね。
……でも。
あんたには悠を“あんなヤツ”呼ばわりされる筋合いなんて、ないから」
立ったまま、見下すように彼を見る。

